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別ページでご紹介しましたように中堅企業におけるM&Aの増加を背景とし、当社のコンサルティングサービスへのお問い合わせも増加しております。
テレビや紙面をにぎわすM&Aの中でもとりわけ敵対的な買収劇が注目されますが、日本市場の大半を占め、中堅企業におけるM&Aのほとんどは友好的な経営統合です。この場合、事業の継続性や、雇用環境の守られるのが一般的です。(参考:図 1 M&A分類例)

ここでは、当社が手掛けている経営統合支援に係るプロジェクトレポートをご報告いたします。
今回のプロジェクトの場合、両社の同族経営、非公開、規模などの共通する生い立ちを鑑みると、統合によっていかに両社の「強み」がいかされるかが重要なポイントとなります。つまり、両社の意思がまとまれば統合実現へ強力な機動力となりますが、まとまらない場合には大きな障害となりかねません。
また共通する点が多くある一方で、もちろん、企業文化や経営思想、その他業務上の様々な側面において互いに異にする要素も多くあります。これらすべてに対して十分な議論をし、互いに認識し合った上で、新たにどのような企業を創造し、また実際にどのように統合をおこなっていくかの青図を書くことから始まります。
こうした議論では正否を決めるのではなく、双方の考え方や意見の相違を理解して、議論を尽くして「正しいプロセスでの合意形成」をすることが肝要となります。
統合までの進め方として、次の3つのフェーズを用意します(「図 2 プロジェクトの進め方」)。

まず①計画フェーズ(約3ヶ月)では、「なぜ経営統合するのか」、その目的や狙い、期待される効果を明確にすることが第1ステップとなります。これらを踏まえた上で、実現にむけて課題となる様々な要素を洗い出し(第2ステップ)、新会社としてどのような方向性で対応していくのかの大まかな指針を打ち立てます(第3ステップ)。
次に、②詳細フェーズ(約5~6ヶ月)は、①計画フェーズで抽出された課題と指針をもとに、いつまでに、だれが、何をしなくてはならないのか、またどのようにするのか、といったより具体的な統合計画を策定します。ここでは検討すべき範囲が広く、また詳細なアウトプットが要求されるため、テーマごとの分科会にて移行に向けた詳細設計を策定していきます。②詳細フェーズで作成された経営統合設計図に沿って実行していくのが、③移行フェーズ(約3ヶ月)となります。
なおフェーズ期間は、法的に新統合会社になっている状態を1年後程度に設定にした場合の目安となります。
当レポートにおいては、①計画フェーズについて、以下の3つのステップごとに詳細にご紹介いたします。

① 計画フェーズのプロジェクト運営体制を「図 3 プロジェクト体制図」に示します。

今回のケースは、営業機能が事業の中心的役割となりました。そこで営業管理職のメンバーを統合委員会メンバーに加え、常に営業の視点を踏まえてプロジェクトを推進していくことが重要になります。また、適宜外部アドバイザーを起用し、経営統合にかかる専門的なアドバイス(特に法的対応や税務的対応)を受けられる体制を用意します。
なお、この統合委員会のメンバーは、次の詳細フェーズにおける各分科会(図 2 プロジェクトの進め方)のリーダーとなり、同委員会はこれらの分科会を束ねるプロジェクト管理機能を担うことになります。
当経営統合においては営業機能を中心に検討することが重要であると述べましたが、それはつまり、両社の”お客様を第一に考える”ことを意味しています。たとえ友好的な統合であっても、個々の具体的なレベルでの検討に至れば、当然、利益相反する局面は多々訪れます。また議論が拡散し、何を基準として決定していいのかを見失ってしまう場面も多いでしょう。その判断基準(この場合、お客様に迷惑をかけないこと、お客様に有利となる選択、等)を、常に確認しながら進めていくことが大切です。
ここでは、次にあげるポイントなどを明確にしていきます。
統合後の“ありたい姿”を描くには、統合に臨むトップ同士が自らの想いを明確に表出することが大切です。中堅企業の友好的M&Aの場合、互いをよく知る両社トップが、文字通り「友好的」関係にありすぎることで、言いたいことや想いをはっきりと言えず、様々な判断に決定力が欠けてしまう傾向にあるからです。中小規模の企業であるほどトップの決定権が大きいため、より強いリーダーシップを持って統合に臨む姿勢が求められます。
このような場面では、コンサルタントが介入することで両社トップインタビューを実施する等して、経営者の想いを引き出し、双方に伝える役割を果たすことが可能です。
統合ビジョンを明確にすることは、統合計画を策定する際の方向性を定める上でとても重要となります。しかし、実はそれ以上に、このビジョンを両社の従業員が共有することで、社内に統合に向けた気運を醸成し、実現への機動力・モチベーションとするとういう点において重要とされます。よって、このビジョン、目的、期待される効果等が従業員にとって納得のいくものでなくてはなりません。そのためには、両社を取り巻く環境を十分に理解し、またそれぞれの強みや弱みが何であるのか等を検証することが求められます。
「経営統合のねらい」や、「経営統合により期待される効果」は、STEP1だけではなく、STEP2、STEP3での様々な議論を通して繰り返し確認し、納得性の高い内容を、なるべく具体的な数値目標を挙げてまとめていくことが大切です。
上記と同じ理由で、具体的な統合日を仮定し、その時点で新会社がどのような状態になっているのか、またその一年後はどうであるのか等の状態を定義し、目標設定を行うことも重要です。
第2ステップでは、現状の両社の強み・弱みを整理、理解しながら、統合に向けての課題点を整理します。
統合計画を立てるためには、各社の企業構造とその構成内容を把握した上で、新統合企業としての構造とその構成内容を立案しなくてはなりません。そこでまず、「図 4 事業概要の比較」のようなフレームワークを活用する等して両社の事業概要を確認します。この両社の場合では、生産機能の有無(左図)という差異と、バリューチェーンごとに見た事業領域での差異(右図)を俯瞰的に見ることが可能です。

計画フェーズでは、それぞれの課題内容を詳細に検討するよりも、むしろ検討すべき項目を漏れなく網羅的に挙げる必要があります。阻害要因やスケジュールへの影響が大きい要因を後から発見しても、対応が手遅れとなり、統合そのものが破たんしてしまう恐れがあるからです。
そのような事態を防ぐために、「顧客」、「商品サービス」、「取引先」といった事業に直接関わる項目、さらにそれらを運営していく「業務のプロセス」、および機能別の項目である「財務経理制度」、「組織/人事制度」、「間接部門(の統廃合)」、「拠点/資産(の統合)」と、それぞれの事業構成要素ごとの検討を進めます。(「図 5 事業構成要素の検討」)

経営統合の阻害要因として大きく取り上げられるのが、企業風土の相違と言われています。企業風土とは、それぞれの企業が持つ創業以来の歴史的経緯や、それを構成する従業員の個性・習慣などを背景に築き上げられているその会社独自の「企業らしさ」です。
個々の事業構成要素の統合をどれだけ計画・実行したとしても、その基盤となる企業風土が統合されなければ、新会社としての企業運営や意思決定は迅速に機能されません。しかし、社員は自らの慣れ親しんできた「企業らしさ」を無意識に尊重し、守ろうとするものですから、その統合は容易ではなく、また時間が必要とされます。
目に見えず、また制度として形に現れていない「らしさ」を把握するのは困難ではありますが、たとえば、従業員インタビューを実施したり、統合の目的・方針を社内で十分に共有したり、またそのためのコミュニケーションプランを練る等して、社員の不安を取り除き、前向きに経営統合を受け入られるような施策を準備するが、成功へのポイントとなります。
では具体的に、どのようにそれぞれの事業要素を検討していけばいいのでしょうか。
次に挙げるのは、「顧客」、「営業プロセス」における論点の例になります。
上記に示すような「顧客リスト」や「顧客マップ」の作成、営業マンへのヒアリングを実施するだけでも、両社の実態をある程度具体的に理解することが可能です。①計画フェーズでは、これらの議論から統合までにどのような課題があるのか洗い出すと同時に、たとえば、
等、統合課題解決のための大まかな方向性を定め、その詳細を②詳細フェーズで計画・実施していくことになります。
同様の検討を「図 5 事業構成要素の検討 」に示すすべての事業構成要素に対して行っていきます。
①計画フェーズの最後に、STEP2で検討した成果をまとめ統合概要計画書(「図 6 統合概要計画書目次 」に案を示す)を作成します。この概要計画書をもとに、②詳細フェーズ以降に具体的な統合詳細計画書を作成することになります。

以上の「統合概要計画書」の完成をもって①計画フェーズの完了となります。
②詳細フェーズの概要は、図で示した通り、①計画フェーズで明確化した課題にもとづき、次のa~cのテーマに応じた分科会にて、移行に向けた詳細設計を検討していきます。
さて、これまで中堅企業の経営統合に向けた検討ポイントをお話しして参りましたが、ここに述べたプロジェクト内容は、ほんの一部に過ぎません。
当社は、経営統合に向けた計画策定、進捗管理、打ち合わせの場での議事進行等のプロジェクト管理業務はもちろんのこと、課題整理のための体系的手法のご紹介、他企業の事例紹介他、経営陣の方々とのご相談の場を設け、様々な疑問やご不安にお応えするよう努めております。